今回のテーマは漢(オトコ)クリフトです。
普段から受け顔で惰弱なクリフトばかり描いているので
たまには「オトコ」な彼を描いてみたいものだと思い挑戦しました。
結果は・・・う〜ん?
よろしければ見てやって下さい。
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荊棘ノ路
(ケイキョクノミチ)
「これは・・・」 クリフトは不穏な空気を感じ顔を上げた。ちょうど日課となっている書庫での調べ物を終え机上の書物を片付け始めているところだった。窓の外は視線に近い高さまでどんよりと黒い雲が垂れ込めている。まるで凶兆を暗示しているかのようだ。 ここ数日、王城は異常な臭気に覆われていた。それはクリフトの経験からしても決して良い気配ではない。城内の一角から端を発したそれは日増しに強くなり、同時に無数の黒い影が城内の至る所で目撃されるようになった。 クリフトは足早に書庫を出て大聖堂へと向かった。同じく日課となっている教会の勤めを果たさなけばならない。しかし聖堂に入ると既に司教である老人が祭壇の前で香を焚き、薬草を始めとした治癒に必要な道具を整えていた。彼の緊迫したその表情から通常の勤めに就いている状況ではない事を悟る。 |
「司教様・・・」 「クリフトか・・・この淀んだ空気は・・・」 神官は黙って頷いた。 「やはり、そうか・・・」 「もう三日も続いています。数が尋常でないのは確かでしょう。城の諸官からも不安の声が上がっています。」 「そうだな、もう三日目だ・・・今日にでも始まるかもしれん。」 「犠牲は避けられないでしょうが、できる限り最少に留めなければ・・・」 「我々の魔法力にも限界がある。陛下を始め、国政に深く関る方にはできるだけ城外に退避していただこう。害が多ければそれこそ国が揺らぎかねない。」 |
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「解りました。大臣達にはそのように上申してまいります。いざとなれば私がこの身に変えても・・・。」 神官はそう言いながら身を翻し聖堂の出口へ向かった。その時・・・ 「クリフト殿!!!」 激しくドアが開き、一人の老人が崩れるように駆け込んで来た。青年神官の腕に縋りつくようにして倒れ込んだ彼の顔は蒼白で苦痛に歪んでいる。 「クリフト殿!早く城へ・・・」 「大臣!」 「すでに下官の半数がやられた!兵一隊で対処できる数ではなかったのだ・・わ、私は・・うぐっ」 「大臣!お気を確かに!」 ガクリと身をのけぞらせ老人は動かなくなった。 「遅かったか!」 二人は聖堂を走り出る。 |
二人が城内に入った時すでに辺りは凄惨たる有様だった。床に横たわる官達のある者は呻き声を上げ、ある者は既に物言わぬ者となっていた。 意識のある者の話では被害は今のところ地上階に留まっている。しかしいつ王の政務室のある上階へ及ぶか予断の許さない状態だった。兵士達の中には臭気にやられ動けない者もいる。被害を食い止めるためにこれ以上兵士を犠牲にすることはできない。 司教が駆け寄り犠牲者の身を起こす。回復呪文を唱える彼に神官が言った。 「司教様、臭気がお身体に障る恐れもあります。どうか先に陛下の元へ!裏口から陛下と共に逃げて下さい。ここは私が引き受けます。なんとしても数を減らさなければ・・・」 「しかし、クリフト・・・」 「お早く!・・・陛下をお願いします!」 司教が階段へ向かったのを確認した後、クリフトはこの異常な臭気をたどって廊下を進み始めた。進むごとに犠牲者の数が増え、臭気も強くなる。首から下げた十字架を握りスカラを唱えた。
廊下の先は城の深部、主に下級官が多く働く領域である。クリフトはその廊下の突き当たりにある部屋を目指した。しかし数歩も進まないうちに足を止める。まるでアッテムトの鉱山で嗅いだような刺激臭と、腐臭にも似た異臭を漂わせ黒い物体が近づいてくるのが見えた。 悪寒が走り額と背中に嫌な汗が流れる。生き物としての本能が発する警告を抑え込みなんとかその場に踏みとどまった。 「確かに・・・これは尋常な数ではない・・・」 呟くとこちらの存在に気付いたのかそれは速度を増して迫ってきた。 ・ ・ ・ ・ |
「あれ?クリフトvここにいたんだ!」
この異臭さえなければまるで夏の草原に咲き誇る向日葵のような清清しい笑顔を振り撒き、愛しい少女は駆け寄ってくる。 手には黒い物体が山のように積まれたトレーを抱えていた。 「あのね今回はフィナンシエに挑戦したの!」 「そうですか・・・」 「たくさん作ったから皆にも食べてもらおうと思ってv」 「姫様・・・」
「クリフトには特別に大きな物を作ったのよv」 汗も流れるが、涙も浮かんでくる。愛する姫が自分の為だけに特別な物を作ってくれた・・・その行為に対する感激の涙と、そしてこの鼻を突く刺激臭の相乗効果であろう。しかしここで情と恐怖に臆するわけにはいかない。自分には完遂しなければならない任務がある。深く深呼吸をしてアリーナ姫に近づいた。そして(当然咽せそうになるが必死にこらえる)彼女の目を見てゆっくり選りすぐった言葉を呟いた。 「独り占めしたい・・・」 「え?」 「姫様の作って下さったお菓子、私が全て頂くことはできませんか?」 「全部?」 「はい・・・」 後ろ手に隠した十字架を再び握りなおし、口の中でキアリーの詠唱を始める。 「珍しいわね・・・クリフトがそんな欲張りなこと言うなんて・・・」 「そんな泣かなくても・・どうしてもって言うなら・・・」 「どうしても・・・」 「じゃあ・・・全部クリフトにア・ゲ・ルv」 (この物体の存在無しに聞いた台詞なら天国にも上れるのに・・・)聖職者としての自分は次元の狭間に追いやり、目前の恐怖をやわらげる為に敢えて馬鹿な妄想をしてみる。
程なくして神官は臨戦態勢を整えた。 この日、クリフトの闘いはMPとHPの限界まで続いたのであった。
「クリフト・・・漢の中の漢だ・・」by司教
終 |
姫様の作ったお菓子って・・・どんだけ・・・やねん。
ひどい表現ばかり使ってごめんねアリーナ。
おそらく多くの場所で既出なネタだとは思いますが・・・
漢(オトコ)なクリフトが描きたかったので、思い切り描きました。(笑)
以前キリリクを頂いて描いた「姫様ケーキネタ」の彼は結局ダメな奴で終わったので
今回は挽回すべく頑張ってくれたと思います。
しかし真のオトコとは愛する人にもダメな事には「NO!」と言える人ではないでしょうか。
そういう意味ではまだまだ修行の足りない神官君でありました。
ところで皆さんどの辺りでオチが見えましたか・・・(汗
イラストレビューページを作ったのでお時間に余裕のある方はご覧下さい。
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