Dear ・・・

 

 

 

懐かしいはずの我が家

荒らされた城

ひび割れた壁、汚れた床、建具には魔物の爪痕

目を覆いたくなる惨状に、私はたまらず外に出る




内部の荒廃とは対照的に

手入れをする者がいなくなった城の庭は草花が自然のままに茂り、咲き乱れ

以前にも増して生命力に溢れているように見えた

何かに縋るように

私は記憶の中の風景を探して庭をひたすら歩いていく




幼い頃駆け回ったバラ園

かくれんぼをした森

ふざけて落ちた池のほとり

目の前の風景と同じように

記憶までもが緑に呑まれていってしまいそうで怖くて

不安を振り払うようにいつの間にか駆け出していた

 

淡い陰を作る木立の間を抜け

見慣れた花畑に出てやっと足を止めた

もともと管理が薄かったからか

ここだけはあの頃と変わらない風景を保ってくれていた



転げまわって胸いっぱい吸い込んだあの懐かしい草の香り

編んだ花輪を交換しあった

変わらない風景の中をあの頃の私たちが通り過ぎていく


ここまで振り向く事なくがむしゃらに走ってきたけれど

常に傍に存在を感じていた彼を振り返る

 

ぴたりと離れず

同じ風景を一緒に確かめていてくれてたんだね

 



 

 

 

私たちは今日も闘う

この城に笑顔を取り戻すために

でも・・・

どんなに頑張っても取り戻せないものがある事も知った

通り過ぎていった時の中に

かけがえの無い想い出を見て共に振り返る



無邪気に触れ合ったあの頃

お互いの体温を遮るものは何も無かった





「こんなに遠くに来ちゃったんだ・・・」


再びこの城にたどり着くまでの旅の間

私たちは大切なものと引き換えに

より大切なものを育んできた




こんな想いを知ってしまったから




もうあの頃の二人には戻れないね





そう・・・今はその手に触れることさえ


こんなにも・・・





「姫様・・・」





あの頃と変わらない日差しの中で

あなたの大人びた笑顔が切なくて

胸から溢れ出たたくさんの言葉が

音にならないまま零れては消えていった




 



そんな零れていく粒を必死に拾い集めて

 







あなたに伝えられたのは・・・





 

 

 

 





「ありがとう・・・一緒にいてくれて・・・」

 


 

 

 









ただ・・・・・これだけ・・・



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手ブロで描いた絵に文をつけてみました。

ストーリーと絵
先に産まれ出たのがどちらなのかはよく解りません。
多分、別々に発生したけれど自然にリンクしたんだと思います。
根元は元々胸に在ったんでしょう。
私の設定の中では珍しく年齢の近そうな二人です。

2009.3.3

 

 

以下今回の設定の妄想語り
今の気分で書きなぐっているので一応隠しておきます。
(今後変更があるかもしれないです)

今回の姫はわりと大人びていて、自分の気持ちがどういう状態なのかを自覚しています。
二人の年齢も割りと近そうで、彼の方も同じく自覚があります。
おまけに旅の間にお互いそれを感じ取り合っているので告白なくして既に相思相愛。
なんだけど恋人同士にはなれていない。(というかなっていない)

こんな設定の二人も我が家にいたんですね。
こうやって毎回異色設定で作るから方向の定まらないサイトになるんだ・・・。

「お互いに自覚しながらも距離を縮められない二人」というのももどかしくていいし、
若しくは「想いは強いんだけど敢えて縮めようとしていない二人」というのもすごくプラトニックで萌える。
すごく想い合ってるんだけど「自制心でお互いに触れることすらしなくなった二人」とかスゲー!
でもこれ・・・自分で妄想しておきながら「後の人生どうするねん。」と
駄々を捏ねてしまう・・・人間できてない私にはハイソな設定です。
(きっと扱いきれない)
もうそんな時は恋愛とか超越した絆で結ばれてくれたらいい・・・



以上